無名人インタビューを主宰する栗林康弘さんが、クライアントのチャンネルを短期間で大きくし、その数字を本業につなぎ直した運用を振り返っている。
広告収入と本業売上の桁の違い
あなたのチャンネルは、何のために登録者を増やしているだろうか。栗林さんがこの記録で最初に示すのは、身も蓋もない数字の比較だ。担当したチャンネルの広告収入は月に数万円ほどで、稼ぎ頭は講師業のクライアントが提供するレッスンと講座だった。その売上は、広告収入と桁が一つ違っていた。
| 段階 | やったこと | 学んだこと |
|---|---|---|
| 設計 | 広告収益を狙わず、申し込みを判断基準にした | 基準を一つにそろえると判断がぶれない |
| 集客 | 話題の動画の隣に関連する動画を毎日置いた | 独自性を出すのは見られてから |
| 伸びた後 | 受付を止めて申し込みと決済を組み直した | 本人の体力は増やせない |
| 審査 | 制作工程を見せる動画で再審査を求めた | ちゃんと説明すれば通じる |
| 終わり | 本人にしかできない仕事が積み上がり運用を終えた | 数字に耐えられる形を先に作る |
栗林さんはもともと、そのクライアントのメールサーバーの管理などを手伝う立場だった。あるとき、友人のゲスト出演動画が別のチャンネルで大きく伸び、そこでクライアントが紹介されていることが分かった。今が伸ばす時期だから手伝ってほしい、と声がかかり、栗林さんは即決で引き受けた。
引き受けたときに決めたことは二つある。一つは、広告収益を狙わないこと。計算したうえで、増やすべきは本業の売上だと判断した。
だから判断基準も、この動画で再生数が伸びるかではなく、この動画で申し込みが入るかに統一した。登録者を増やす動きと申し込みを増やす動きがぶつかれば、後者をとる。
もう一つは、YouTubeを中心の拠点にすることだ。クライアントには、ブログ、商品の紹介、セミナーという、それまでばらばらにあった資源があった。人がすでに来ているのだから、新しく何かを作るより、手元の資源をYouTubeにつなげばいい。この考え方が、後の出版やメーカーとのコラボにつながっていく。
なぜYouTubeだったのかについて、栗林さんはこう見ている。InstagramやTikTokが今この瞬間の流行を捕まえる場所だとしたら、YouTubeは知識を蓄えていつでも取り出せる場所だ。専門知識を分かりやすく伝えるクライアントの分野には、検索されやすいYouTubeが合っていた。
最初に手をつけたのは、流行っている動画の隣に自分たちの動画を置くことだった。友人との既存の共演素材をまとめた動画を出し、話題の動画に関連する内容を扱い、タイトルやタグに友人の名前を入れ、許可を得て友人の映る動画を公開した。そして毎日夜八時に投稿を続けた。
おすすめや関連動画は、今見られているものの隣に似たものを並べる仕組みだ。だから、何をもって似ていると判断されるのかを読み、そこに引っかかるように作る。人が集まったところに、人を集めたい人が集まる。栗林さんはこれを、知らない人を知る機会はこうやってしか作れないと肯定的にとらえている。
ただし順番を間違えないように、と念を押す。初期は人集めで、独自性を出すのはそのあとだ。見られてもいないうちに自分らしさを打ち出しても、誰の画面にも出てこない。隣に並んだところで中身がなければ何も起きない、とも念を押している。
伸びた後に受付を止めて組み直す
伸びた後に起きたことを、この記録は隠さず書いている。申し込みが一気に増え、概要欄からLINEに誘導して日程と料金をやりとりし、振込を確かめ、オンラインでレッスンをする流れが、手作業のままでは回らなくなった。個別の対応が追いつかず、入金の確認も予定の管理も破綻した。
そこで栗林さんは、受付を半月止めた。登録だけしてもらって順番を待ってもらい、その間に申し込みフォーム、予約の道具、オンライン決済、入金確認の自動化、会議情報の自動共有へと仕組みを組み替えた。毎日の投稿を続けるために、企画、編集、サムネイルを担う制作チームも組んでいる。
体制を整えてから本格化したのではなく、先に注文が来て回らなくなってから整えた、という順番だった。受付を止めた一番の理由はレッスンを本人しかできないことにあった。事務は人を増やせばなんとかなるが、本人の体力は増やせない。
もう一つの大きな判断が、動画の本数の比率を途中でひっくり返したことだ。最初の二週間は友人の関連動画を多めにし、後半の二週間でクライアント自身の動画を多めに切り替えた。来てくれた人の多くが友人のファンだと察していたからで、友人の素材が尽きたときに何が残るかを見据えていた。
友人の関連動画はクライアントの動画より数倍よく見られていたので、数字の上ではしばらく寂しい状況が続いた。それでも比率を戻さなかった。結果として、クライアントのファンになった人、両方のファンになった人、友人のファンのまま残った人に分かれ、チャンネルは友人頼みから抜け出せた。
収益化審査に落ちたときの再審査
途中では、友人が自分のチャンネルを作ることになり、その運営も任された。告知しただけで動画を出す前から登録者が大きく集まり、数本の動画で収益化の条件を満たした。ところが審査は却下された。
作成直後の条件達成や、投稿前の急激な登録者増、方向性の分かりにくさが、機械から見て異常に映ったのだろうと栗林さんは推測している。
そこで行ったのが、制作の工程を見せ、自分が制作を担当していると名乗る数分の動画を作って提出することだった。YouTube公式ヘルプも、動画で再審査を求める場合には、コンテンツがどう作られたかの目に見える例を示し、編集や撮影の様子を見せるよう案内している。結果として審査は通った。
栗林さんがここから得た教訓は二つだ。極端なことをやると、良くも悪くも引っかかる。そして、ちゃんと伝えれば理解してもらえる。巨大な仕組みを相手に個人が門前払いされても不思議はないが、説明すれば通じる相手だった。
判断基準の統一からコメント記録までの実務
チャンネルを運用する側がまず持ち帰りたいのは、判断基準を一つにそろえることだ。再生数、登録者、申し込み、どれを優先するのかが決まっていないと、企画やタイトルの判断が毎回ぶれる。事業のためのチャンネルなら、申し込みにつながるかを最優先にするという線を最初に引いておくといい。
毎日投稿の実務は、朝に前日の数字とコメントを確認し、昼に撮影と編集、夕方にサムネイルを作って夜の投稿に備えるという流れだ。構成は結論、理由、具体例、結論の順に固定し、編集は無音や言いよどみを削るだけに割り切った。字幕の修正を話した本人に頼むのは、誤字が減る使える手だとしている。
サムネイルだけは手を抜けない。すでに機能している隣の動画の形に合わせ、デザインはほぼ固定して背景だけ数種類を用意し、顔の表情は毎回変え、明るく補正し、文字はスマートフォンでも読める大きさにする。美しさより統一感と分かりやすさを優先し、クリック率を見ながら探っていく。
いちばん地味で、いちばん効いたと栗林さんが書くのが、コメントをすべて読んで記録することだ。YouTubeだけでなく、ほかの交流サイトや公式LINEの反応まで毎日見て、視聴者の悩み、効いた要素、次に作るべきものを表に書き、月に一度見返して戦略を直す。数字は結果しか教えてくれないが、コメントは理由を教えてくれる。
審査で困ったときの対応として、YouTube公式ヘルプが案内する動画での再審査請求は覚えておきたい。公式は、コンテンツがどう作られたかの目に見える例を示すよう求めている。普段から制作の様子を記録しておけば、いざというときに説明の材料になる。
本業をそのまま撮って出す循環も、多くの事業者に応用できる。実際の相談、レッスンの切り抜き、講義、公開の一回限りのレッスンは、再生数では企画ものに負けても、一本ごとに申し込みが入った。ここが回りだすと、企画会議もネタ出しもいらず、本業の余りがそのまま素材になる。
一方で、栗林さん自身が線を引いている点も見落とせない。この結果はクライアントに話す中身があり、友人の話題という運があったから出たものだ。毎日投稿は短期間で立ち上げるための手段であり、実際に長くは続かなかった。数字が増えるほど本人にしかできない仕事が積み上がり、プロジェクトは数か月で終わっている。
数字を作ることと、その数字に耐えられる形を作ることは別の仕事だ。チャンネルの成長を目指すなら、伸びたときに誰の負担が増えるのか、どこで受付を止めるのかまで、先に考えておきたい。
AI編集部のつぶやき