EDLとXMLで何が渡るのか
話の中心にあるのは、LogiClipという無音カットと文字起こしの補助ソフトだ。紹介しているのは、開発者本人でもあるプログラマー大家さんで、自分の製品の連携機能を解説する記事になっている。宣伝を兼ねた記事であることは先に押さえておきたい。
記事がまず挙げるのは、自動処理を取り入れた編集者がはまりがちな二度手間だ。無音部分を切った動画を書き出したものの、後から切れ目を細かく直せない。切った動画と文字起こしの時刻を、編集ソフトの上で手作業で合わせ直している。
| 比べる点 | 切った動画で受け取る | EDLやXMLで受け取る |
|---|---|---|
| 切れ目の微調整 | 元の素材から探し直す必要がある | 編集画面で端を引き戻せば戻る |
| 書き出しの待ち時間 | 処理のたびに発生する | 文字の情報だけなので一瞬で済む |
| 画質 | 書き出しのたびに劣化が積み重なる | 元の素材の画質のまま |
| 注意点 | やり直しに時間がかかる | 編集ソフトとの相性を事前に確かめる |
書き出しを何度も挟み、画質の劣化や待ち時間が生まれている。
せっかく下ごしらえを自動化しても、普段使っている編集ソフトにその結果を滑らかに引き継げなければ、効率は半分も出ない。記事はこの状態を、自動処理の道具と編集ソフトの間にある壁だと表現している。
その壁を越える手段として紹介されているのが、EDLやXMLという形式での受け渡しだ。どちらも動画そのものではなく、どの素材のどの部分を何秒から何秒まで使い、編集画面にどう並べるかという編集の情報を書き記した文書である。
LogiClipで無音カットの条件を決めて文字起こしを実行し、終わったらEDLかXMLを出力する。それをPremiere ProやDaVinci Resolveに読み込むと、無音部分の切れ目が刻まれた状態で素材が並び、すぐに字幕の装飾や音楽入れといった本編集へ進める、という流れだ。
文字起こしには音声認識のWhisperを使っており、字幕の時刻も切れ目と同期した状態で扱えると説明されている。切れ目と字幕の時刻がずれないことは、字幕付きの動画を量産する人ほどありがたいはずだ。
記事は、この仕組みで作業時間が大きく減ると強い言葉で書いている。ただし、その効果は投稿者自身の環境と使い方での実感であり、編集部で確かめた数字ではない。どの程度の時短になるかは、素材の長さや話し方によっても変わるだろう。
それでも、自動処理の出口を動画ではなく編集情報にするという考え方は、製品を使うかどうかとは別に知っておく価値がある。同じような連携は、他の文字起こしや無音カットの仕組みでも用意されていることがあるからだ。
無音カットの自動化そのものは、もう珍しい技術ではない。差が出るのは、その結果をどれだけ手間なく普段の編集へつなげられるかという部分で、記事はそこに焦点を当てている。
切りすぎを戻せる理由
切った結果を動画として焼き付けないことで、あとから何度でも戻せる状態を保っている。記事の言葉を借りれば、動画が物理的に切られているわけではなく、切れ目の情報として読み込まれているので、切りすぎた箇所も端をつまんで引き戻すだけで元に戻せる。
自動の無音カットは便利だが、話の余韻や息継ぎまで削ってしまうことがある。切った動画が書き出されてしまうと、その余韻を取り戻すには元の素材から探し直すしかない。編集情報として受け取れば、気になった箇所だけをその場で広げ直せる。
書き出しを挟まないことも大きい。動画を書き出し直すたびに待ち時間が生まれ、圧縮による画質の劣化も積み重なる。受け渡すのが文字の情報だけなら出力は一瞬で済み、元の素材の画質もそのまま保たれる、というのが記事の説明だ。
取り込んだ後の作業のしやすさも、編集ソフトの作りと関係している。Blackmagic Designの公式製品ページによると、DaVinci Resolveは作業ごとに専用の作業空間と機能を持つページに分かれている。下ごしらえの済んだ並びを編集のページで受け取り、そこから色や音のページへ進むという流れに、編集情報での受け渡しは自然になじむ。
逆に言えば、自動処理の道具の中で仕上げまで済ませようとすると、編集ソフトのこうした分業の強みを使えない。下ごしらえは自動処理に、演出と仕上げは使い慣れた編集ソフトに任せる役割分担が、この方法の価値だ。
記事は、LogiClipを単体で完結する道具ではなく、普段の編集環境の前処理として位置づけている。編集ソフトを置き換えるのではなく、その手前の地味な作業を肩代わりする、控えめな立ち位置だ。実際の現場にも入り込みやすい。
記事には、実際に出力された編集情報の中身を写した画面も添えられている。中身がただの文字の並びであることが分かれば、読み込みがうまくいかないときにも、どこでずれたのかを落ち着いて調べやすくなる。
字幕の時刻がそろった状態で受け取れる利点は、字幕を後から別の言語に置き換える場面でも生きてくる。時刻の土台が正確であれば、文章だけを差し替えて同じ切れ目を使い回せるからだ。
取り込み前に確かめること
話し手が一人で延々と語る解説動画や講座動画を作っている人には、この考え方がそのまま効く。無音部分を自動で詰め、字幕の時刻もそろった状態から編集を始められれば、一本あたりの下ごしらえの時間はかなり短くなるはずだ。
一方で、間の取り方そのものが演出になる対談や、笑いの間が大事な動画では、自動の無音カットは慎重に使いたい。切れ目の情報として受け取れるからといって、全部をあとで戻すなら、最初から手で切ったほうが早い場面もある。
どの形式を選ぶかも使う編集ソフトによって変わる。EDLは古くからある単純な形式で、XMLはより多くの情報を持てるが、ソフトごとに読み方が違うことがある。自分の編集ソフトがどちらを素直に読めるかを確かめておくのが近道だ。
もっとも、EDLやXMLの受け渡しには相性の問題もつきまとう。編集ソフトの版や設定によって、読み込んだときに素材の場所が見つからなかったり、細かな情報が落ちたりすることはある。最初は短い素材で一度試し、並びが正しく再現されるかを確かめてから本番に使いたい。
DaVinci Resolveのように作業ごとのページを行き来して仕上げる編集ソフトでは、最初の並びが整っているほど、後の色や音の作業に集中しやすい。下ごしらえを自動で済ませ、編集のページで確かめてから次のページへ進む、という順番を自分の手順として決めておくとよい。
外注で編集を受けている人なら、依頼主から届いた素材を自動で下ごしらえし、編集情報のまま自分の編集ソフトへ取り込む流れを作っておくと、急ぎの案件でも余裕が生まれる。切れ目の情報が残っているので、依頼主から戻しの指示が来ても対応しやすい。
文字起こしの結果をそのまま字幕に使う場合は、誤変換の確認を忘れないようにしたい。時刻がそろっていても、固有名詞や専門用語の聞き取りは自動では外れやすい。字幕の文章は、最後に人が映像と照らし合わせて読み直す工程を残しておくべきだ。
自動化の道具を選ぶときは、切る速さや精度だけでなく、結果をどんな形で渡せるかも比べる観点に加えたい。動画でしか受け取れない道具と、編集情報で受け取れる道具では、後から直す自由度がまるで違う。
効果の大きさは割り引いて読む必要があるが、自動処理の出口を編集情報にするという発想は、どの道具を使う人にとっても、編集の二度手間を減らすための確かな手がかりになる。
まずは手元の編集ソフトが、どの形式の編集情報を読み込めるかを確かめるところから始めるとよい。取り込みの手順を一度覚えておけば、今後どんな自動化の道具を選ぶ場合にも応用できる。
AI編集部のつぶやき