既定プリセットとカスタムプリセットの違い
TourBoxは、ダイヤルやボタンを片手で操作して、編集ソフトやイラストソフトのショートカットを呼び出す左手デバイスだ。キーボードを見ずに操作できるので、長時間の編集ほど効いてくる。作業中のソフトに合わせて割り当てを自動で入れ替える機能も用意されている。
今回紹介するのは、イラストレーターで動画制作者でもあるにのにしさんの記録だ。TourBoxの上位モデルを使い始めて間もないにのにしさんは、この自動切り替えをオンにしているのに、DaVinci Resolveを前面に出しても割り当てが切り替わらないという問題に悩まされた。
| 比べる点 | 既定のプリセット | カスタムプリセット |
|---|---|---|
| 最初のキー設定 | ソフト向けにあらかじめ割り振られている | 空の状態から自分で設定する |
| ソフトとの連携 | 自動で済むが、解除や再連携はできない | 起動中のソフトから手動で選ぶ |
| 自動切り替え | 今回の記録では効かなかった | 正常に切り替わった |
| ページごとの割り当て | カラーや音声など作業ごとに変えられる | 全ページで共通の割り当てになる |
毎回手作業でDaVinci Resolve用の割り当てに切り替えないと作業ができない。自動切り替えに期待して買った人にとっては、地味だが確実にストレスのたまる不具合だ。にのにしさんは、ハードウェアには満足している一方で、設定用のソフト側には不満が多いと率直に書いている。
原因として突き止めたのは、プリセットを新しく作るときに選べる、各ソフト向けの既定プリセットだった。最初からキーが割り振られ、ソフトとの連携も自動で済むはずのものが、自動切り替えだけは効かなかったという。
逆に、キー設定が空の状態から自分で作るカスタムプリセットを使い、連携するソフトを手動で選ぶと、自動切り替えは正常に動いた。公式に対応していないソフトを自分で登録した場合でも、切り替えは問題なく行われていたそうだ。
にのにしさんは、既定プリセットの連携を一度解除して再連携すれば直るのではないかとも考えた。ところが既定のものは連携の解除自体ができず、利用者の側で直す手段がない。結局、公式の修正を待つか、カスタムプリセットに移るかの二択になる。
原因の推測として、既定プリセットが頻繁に更新される編集ソフトの本体をうまく認識できていないのではないか、という見立ても紹介されている。ただしこれは本人がAIと相談して得た推測であり、メーカーが認めた原因ではない点は区別しておきたい。
記事は、同じ現象に悩んでいる人がすぐ試せるように、カスタムプリセットの作り方と、連携するソフトを選ぶ画面の操作まで順を追って説明している。
失うもの:ページごとの割り当て
回避策を示すだけで終わらず、その回避策で失うものまで具体的に書いている。機材の不具合を扱う記事は、直し方を見つけた時点で終わってしまうことが多いが、この記録は代償の説明にしっかり紙幅を割いている。
代償の中身を理解するには、DaVinci Resolveの画面構成を知っておく必要がある。Blackmagic Designの公式製品ページによると、編集はカットとエディットのページ、視覚効果とモーショングラフィックスはFusionのページ、色調補正はカラーのページ、音声はFairlightのページ、素材の整理と書き出しはメディアとデリバーのページで行う。
既定のプリセットには、こうしたページごとに異なるキー設定がまとめて盛り込まれている。カラーのページではダイヤルで色を回し、Fairlightのページでは音量を触る、といった具合に、同じボタンの役割をページに合わせて変えられるのが既定プリセットの強みだ。
一方でカスタムプリセットでは、このページごとの設定が作れず、すべてのページで共通のキー割り当てになる。自動切り替えを取り戻す代わりに、ページに応じて役割が変わる便利さを手放すことになるわけだ。
にのにしさん自身は、作業の大半をエディットのページで済ませているため、この代償は問題にならないと書いている。回避策が向いている人と向いていない人の境目が、本人の使い方を通してはっきり示されている。
もう一つ参考になるのが、カスタムプリセットを作るときの工夫だ。キー設定を全部自分で入れるのは手間だが、一度既定のプリセットを作って中身を見ながら真似れば迷わない、と助言している。
既定のキー配置そのものが使いにくい、という本人の感想も書かれている。最初から割り振られた設定に合わせるより、自分の手の動きに合わせて一から組んだほうが結局は速い、という人も多いはずで、回避策が結果的に設定を見直すきっかけにもなっている。
不具合の再現条件として、使っていた設定用ソフトの版まで書き添えている点も丁寧だ。同じ症状に出会った人が、自分の環境と比べて同じ問題かどうかを判断しやすくなるし、将来の更新で直ったかどうかを確かめる手がかりにもなる。
カスタムで作り直す手順
カスタムプリセットを作り直すときは、連携先の一覧に起動中のソフトしか表示されない点に注意したい。先に編集ソフトを立ち上げてから、連携するソフトを選ぶ必要がある。
TourBoxでDaVinci Resolveを操作している編集者にとって、次に確かめたいのは自分の作業がどのページに偏っているかだ。エディットのページで仕上げまで済ませる人なら、カスタムプリセットに移っても困る場面は少ないだろう。
反対に、カラーのページで長時間色を追い込む人や、Fairlightのページで音を細かく整える人にとっては、ページごとの割り当てを失う痛みは大きい。その場合は、自動切り替えを諦めて既定のプリセットを手動で呼び出すほうが、結果的に効率がよいかもしれない。
どちらを選ぶにしても、今の不具合がいつ直るのかは分からない。設定用ソフトが更新されたら、既定のプリセットで自動切り替えが戻っていないかを一度試す、という確認の習慣をつけておくと、回避策に縛られ続けずに済む。
DaVinci Resolveのように、カットやエディット、カラー、Fairlightなど作業ごとにページが分かれた編集ソフトでは、左手デバイスの設定もページの数だけ考えることになる。周辺機器の設定を見直すときは、ソフトの画面構成と一緒に考えるのが近道だ。
周辺機器の不具合は、編集ソフトの更新とセットで起きることが多い。大事な案件の最中に編集ソフトを更新すると、ソフト本体は無事でも、手元の機材の割り当てが突然効かなくなることがある。更新の時期は、納品の予定と切り離して決めたい。
また、自動切り替えに頼りすぎない運用も一つの考え方だ。よく使う二つか三つのソフトだけを手動で切り替えるボタンを用意しておけば、自動切り替えが止まったときにも作業を止めずに済む。便利な機能ほど、止まったときの逃げ道を持っておくと安心だ。
今回の記録は宣伝を含む記事であることも明記されている。読む側としては、機材の評価そのものより、不具合の切り分け方と回避策の代償という、ほかの機材にも応用できる考え方の部分を持ち帰るのがよさそうだ。
左手デバイスは、編集の速さを一段引き上げてくれる一方で、設定の手間という見えにくいコストも抱えている。どこまで設定に時間をかけるかも、道具を選ぶときの判断材料になる。
同じ現象に出会ったら、まずは新しいカスタムプリセットを一つだけ作り、編集ソフトを前面に出したときに切り替わるかを確かめてみるとよい。いきなりすべての割り当てを作り直すのではなく、切り替わることを確認してから中身を移していけば、作業の手を止める時間を最小限にできる。
AI編集部のつぶやき