ただし、再リンクできることは、どんな名前・尺・フレームレートでも自動的に正しく結びつくという意味ではありません。編集部が持って帰ってほしいのは「プロキシ形式の自由」ではなく、原版へ戻れる識別情報を先に守ること。軽い素材を作る前に、戻り道を一本だけ実測します。
更新で何が変わったのか
Blackmagic Designのサポート情報では、21.0.4で異なるフォーマットのプロキシクリップを再リンクできるようになり、X-OCN対応、選択クリップをレビューするAPI、巨大なキャッシュを持つタイムラインの再生改善も追加されています。ここで重要なのは、プロキシの作成機能そのものではなく、制作途中で形式が揃わなくなった時の復旧余地が増えた点です。
たとえば撮影班がH.264のプロキシ、社内編集機がProResプロキシ、外注先が別解像度の中間素材を使う場合、以前は運用を一種類へ固定しないと再リンクで困りやすい場面がありました。対応拡張は選択肢を増やしますが、異なるファイルを同じショットだと識別する材料が残っていることが前提です。
更新案内は機能の存在を示しますが、可変フレームレート、速度変更、音声チャンネル、リール名、タイムコードまで無条件に吸収するとまでは書かれていません。自分の素材と共同編集環境で、一本の往復テストを行う必要があります。
ここ、地味なんですが、事故ると本当に痛いところです。プロキシは軽くて気持ちよく進めるぶん、最後に原版へ戻れないと、それまでの速さが全部怖さに変わります。
プロキシで絶対に変えないもの
ファイル名、相対フォルダ、開始タイムコード、フレームレート、音声の長さを、再リンクの識別情報として扱います。画質を軽くするための解像度やコーデックは変えても、ショットの身元まで変えません。撮影カード名とクリップ名が衝突する案件では、取り込み時に一意な名前へ整理してからプロキシを作ります。
スマホ素材のように可変フレームレートが混じる場合、単なるトランスコードと編集用の正常化を分けます。プロキシで再生が滑らかでも、原版へ戻した時に音がずれたり尺が変わったりすれば成功ではありません。冒頭・中間・末尾で波形とフレームを照合します。
共同作業では「プロキシを共有した」だけで終わらせず、生成設定、保存先、削除可否、原版の場所、再リンク確認日をプロジェクトメモへ残します。再生成できる作業物と、二度と撮り直せない原版を同じ扱いにしないことが、容量整理にも効きます。
10秒の往復テスト
代表クリップを10秒だけ複製プロジェクトへ置き、原版でフレームと音を確認します。次に一つ目のプロキシ形式へリンクし、スクラブ、再生フレームレート、色、音を記録。別形式へ差し替え、最後に原版へ戻します。ここまで通って初めて、バッチ変換へ進みます。
カラー、速度変更、Fusion、マルチカムを一度に試すと、どこで崩れたか分かりません。最初は素のクリップ、次に速度変更、最後に重い処理の順で増やします。キャッシュ改善もプロキシ改善と混同せず、素材読み込みとエフェクト計算を別条件で測ります。
成功条件は「リンクされた」という表示ではなく、同じフレーム、同じ音、同じ尺、同じ原版へ戻ったことです。アップデート後の最初の案件では、納品書き出し前にもプロキシ利用設定を確認し、原版を使うべき工程で軽量素材を誤使用していないか照合します。
まず10秒だけ。戻れれば次へ。戻れなければ、まだ全素材には広げません。焦って全変換すると、あとで原因探しに泣きます。
編集部の実務ノート
実際の案件では、編集開始日に全素材をプロキシ化するより、カメラ別に代表素材を一本ずつ選ぶ方が早く危険を見つけられます。ロングGOP、イントラフレーム、スマートフォン素材を混ぜ、同じ十秒を往復させます。問題が出た形式だけを分離すれば、全体の作業を止めずに済みます。
外注先へ渡す時は、プロキシだけでなく「この素材へ戻るためのキー」を添えます。クリップ名、撮影カード、開始タイムコード、フレームレート、音声チャンネル、原版の保管先を一行にまとめ、再リンク後に確認するフレームを静止画で示します。説明書より照合点がある方が、受け手は迷いません。
もし原版へ戻した時に尺や音が変わったら、リンクを繰り返して偶然直すのではなく、そのクリップを隔離します。可変フレームレートの正常化、音声配置、速度変更の順に原因を切り分け、合格した素材だけを再び全体へ戻します。復旧経路そのものを案件テンプレートに残すのが今回の実利です。
最後に「原版の一意な名前」と「原版へ戻した最終書き出し」を、開始前と終了後の二回で照合します。担当者、確認した素材、時刻、判定、戻し先を一枚に残せば、成功した操作だけでなく失敗からの復旧も次の案件へ渡せます。画面が正常に見えることを完了条件にせず、別の人が同じ根拠へ戻れる状態を完成とします。
導入前の確認メモ
まずは「原版の一意な名前」。ここが戻れれば第一関門はOKです。結果と確認日時、それから戻し方を一行だけ残します。
次に見るのは「開始タイムコードとフレームレート」です。本番と同じ条件で一度試し、うまくいかなかった条件も消さずに書いておきます。
「冒頭・中間・末尾の音ズレ」は、できれば別の人にも見てもらいます。自分の画面で正しく見えただけでは、まだ完了にしません。
途中で迷ったら「プロキシ生成設定と保存先」まで戻ります。別案件の成功例をそのまま当てはめず、今回の素材で取り直します。
最後は「原版へ戻した最終書き出し」。ここまで同じ結果を再取得できて、ようやく全体へ広げます。急ぐのはその後で大丈夫です。
AI編集部はこう見た
戻せる機能があっても、名前やタイムコードを変えた素材は別ショットへ誤接続する危険がある。
10秒の往復を先に通せば、全素材を変換してから気づく事故を減らせそう。
自由になったのはプロキシ形式です。ショットの身元まで自由に変えてよいわけではありません。
今日の持ち帰り
プロキシ形式を決める前に、原版→プロキシ A→プロキシ B→原版の10秒往復を行う。ファイル名、タイムコード、フレームレート、音声、尺が一致してから全素材へ広げる。
出典
- Blackmagic Design Support|DaVinci Resolve 21.0.4
- DaVinci Resolve 21 New Features Guide
- Blackmagic Design|DaVinci Resolve
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